CLUBゆり太へようこそ・・
悩みながら 迷いながら
迎えた 最後の出勤日
ようやく 息苦しかった
ママとの毎日から 解放される・・
物事に 区切りが付く時
ツラかった時間が 自然と 優しさに
変わるのは 何故なのだろう・・??
今日はそんなこと書いていきますので
どうか最後まで お付き合い下さいな。。
辞めると伝えてから この日まで
自分の 忍耐力を 常に 試されているような?
そんな 気持ちで 過ごしていた。
誰よりも 店の為に 尽くしてきたハズなのに・・
ここ数日の あからさまな冷遇に
さすがに ムカつき
出勤前
「今日こそ バッくれてやろうか?」と
思う日も けっこう あった。
でも ここで きちんと
勤め上げ 初めて 他で
仕事することを 認められる・・
そう言う 世界だ。
だから 私は ママに
どんな扱いを 受けようが
ただただ 何も言わず
店に 出続けてきた。
それも 明日で 終わる・・
ここ 数日 客を呼ばず 早帰りばかりしていたが
流石に 最終日ぐらい 誰かしら呼ぼうと思っていた。
ただ 辞めることは伝えても
その後の 身の振り方について
ゴミ松に口止めされてるため
現段階では 誰にも 伝える事が出来ない。
大抵 どの客も 辞めたら
「その後 どうするのか??」を
聞いてくるのは ごく 普通なことだった。
そもそも
何故 ママの店を辞めるのか?とか
その辺りを 色々聞かれるのも
とてつもなく面倒だった。
客は 担当の女の子のことだけで無く
店の 内情にも
実は ものすごく 興味を持っていたりする。
その内情を 知ることで 自分は 店の常連であり
内情を明かした 女の子からも
信用を得ていると 思えたりもして
「自分は特別」みたいな 感覚を
味わうのか?? なんだかんだ
嬉しいと 感じるようだ。
ただ 私は ここについては
かなり 慎重なタイプだった。
来店した お客様のプライベートに関する事は
もちろんだが 店のスタッフや
内情について 喋る
その行動は 時に 自分の評価を落とすことに繋がりかねない。
先に述べた
自分は特別と 感じる客もいれば
同じように 自身のプライベートも こうして平気で
他人に 喋られているのではないのか??
そのように 客が不信に思えば
もう その時点で 店には 来なくなるだろう。
この 世界は 接待など含め お客様や
時に その会社に関わる 機密的な内容を含む会話を
見聞きする事もあり
いつ 誰が来店したかも含め
そのお客様の情報を 口外することは
絶対にしてはならないのだ。
例え それが 自分の店の内情で
身内のことであったとしても 自分以外の人間との
やり取りを 第三者に漏らしていると
受け取られることは 自分にとって
大きなマイナスと 私は考えていた。
そんな理由から 最終日に 誰を呼ぶかで
ここ数日 頭を抱えていたのだ・・
辞める事を伝え
店に呼んでも こういった微妙な
私の状況を 理解し あれこれ
面倒な 詮索をして来ない
そんな私の願望に 限りなく近い人物・・
頭に浮かんだのは
あの 休日デートをした
「タク兄」 だった。
タク兄への連絡は 基本メールだけど
その日は 土曜だったので 電話をかけた。
(※タク兄は単身赴任者なので休日電話OK!!念のため・・笑)
「ゆり太さん おはようございます。」
真面目なタク兄は 電話の向こうで
背筋を伸ばし 直立してそうなくらい
丁寧 かつ ハリのある声だった。
まわりくどい 話を抜きに
私は 今日で店を辞めること
最終日なので 来て貰えると 嬉しい と だけ伝えた。
「そうですか・・これまでご苦労様でした。」
「今日 是非 お伺いさせて頂きます。」
さすがに タク兄も
辞めることは 少し驚いていた様子だったけど
当然 理由や今後どうするかなど
私が 語らないことを いちいち聞かないのが
タク兄であり その人柄であるからこそ
私は 最後に呼ぶ お客様に選んだのだ。
タク兄と同伴はせず そのまま 店に出勤すると
「ゆり太さん 辞めちゃうんですか?」
どやどやと 何人かの 女の子たちに囲まれた。
この日 店が終わったら
送別会をやって貰えることに なっているらしく
その知らせと同時に 私が辞めるのを 正式に知ったらしい
「うん そうなんだよ 言ってなかったけど」
「色々あるけどさ みんな頑張ってね」
お約束の 言葉しか見当たらなかった・・
いざ 今日で この子らと仕事をするのが
最後なのだと思うと やっぱり
心が ギュッと締め付けられた・・
ケータイが鳴り 「タク兄」からだ。
「もう 近くにおります。間もなく着きます」
私は エレベーターで下までおり
通りまで タク兄を 迎えに出た。
普段は こんなことはしないのだが
最終日 経費でなく自腹で 来てくれるタク兄に
せめてもの 感謝の気持ちだった。
通りを眺めていると
タク兄の姿が
だんだんと近く ハッキリ見えて来た。
いつもは 髪の毛を ジェルかなにかでペッタペタに
なでつけているのに 今日は ふんわり。
少し着崩した ネクタイ無しのシャツと
スーツのズボン姿だった。
「ゆり太さん お待たせして 大変申し訳ございません」
相変わらず 実直すぎる
堅苦しい挨拶に 思わず 笑ってしまった。
そして 何となく この 吹き出した瞬間から
私も 今日まで 張り詰めていたものが
緩んだような・・ そんな気持ちになり
「タク兄 今日は お休みなのに
わざわざ ありがとうございます。」
「さっ どうぞ」
エレベーターに タク兄を促し
階を上がる ほんの わずかな時間
こんな形の 急な報告になったことを
短く お詫びした。
タク兄は 笑顔だけ向けて
特に 何も言わなかった。
店に 入ると 誰も 客がいない。
思えば こんな日ばかりだった。
ママすら誰も呼べない日が 増え
店は いつも 暇だった。
タク兄と 席に着くと
ヘルプが 2人やって来た。
おそらく ママから
タク兄を引くように言われてるのだろう。
私は 別に 構わなかった。
むしろ ここで どちらかが 引くべき。
そうでなければ ヘルプから抜け出せないのだ。
ただ この子らに そう言う意識は 無いようだ。
名刺を出すまではしたが
ひたすら お酒を作り続け 会話もほとんど絡まない
カウンターの 奥の方から
そんな こちらの様子を ママが
伺っているように 見えた。
私を指名していた タク兄が
このまま店に 来なくなる可能性もある
ママだって 経費を持つ大口のお客様を
みすみす 手放すようなことは したくないのだ。
その為 入れ替わり 立ち替わり
不自然な程 ヘルプを入れ替えてきた。
タク兄の他に 客がいない・・
私の他に 誰も客を 呼ぶことが出来ない
ガラッとした 店内は
精彩を欠いた ママの指示で回される
ヘルプの動きだけが 忙しかった。
そんな 微妙な時間が流れる中
昼間の仕事を 終えた ノリカ姉さんが
少し遅れて出勤してきた。
「いらっしゃいませ~」
2人 着いていたヘルプをよそに
ノリカ姉さん1人増えただけで
テーブルは あっという間に 賑やかになる。
タク兄以外の客は 誰も来ないまま
ラストソングの時間になった。
ラストソングとは
客に閉店時刻を 知らせる曲で
店によって 決まった楽曲もあれば
その月のナンバーワンが 好きな曲を歌うなど
店によって まちまち。
大抵 曲のイントロ 間奏 エンディング辺りに
簡単な MCを入れるのが 一般的。
歌がヘタクソな 私は
これがあんまり 得意じゃなかったけど
この日は ラストソングを 仕方なく 歌い
ようやく この店での役割を終えた。
近くの 居酒屋に 店の従業員と
タク兄も一緒に やって来た。
座敷に 横長のテーブルが置かれ
みんな ドカドカと座り
タク兄も恐縮しながら 私の隣に腰を下ろした。
注文した酒が どんどん運ばれ
「ゆり太さん お疲れ様でした~~っ!!」
ジョッキが次々 ぶつけられ
今日まで 私に手を貸してくれた 仲間達と
遠慮無く 騒ぐことにした。
タク兄も お店の中とは また違った
みんなの雰囲気に 巻き込まれ
いつもより リラックスした様子に見える。
ママとテルさんは 少しだけ
みんなと 離れた テーブルの端っこの方で
物静かにしていた。
「ゆりゆり・・」
隣に 座っていた ノリカ姉さんが
ちょっと 真顔で
「アタシさぁ 最初 大っ嫌いだったの」
「ゆりゆりのこと」
「へっ?!」
仲良しだと思っていた ノリカ姉さんからの
いきなりの 衝撃発言に
ビックリして 思わず 笑いたくなった。
「いや~~生意気な女だな~~って、思って
この女とは 絶対 仲良くなれないだろうな~って
最初 思ってたんだけど・・」
「いなくなったらさ、 さみしいじゃん・・」
そう 言いながら
ノリカ姉さんは 声を詰まらせ 泣き出した。
お酒も入ってるせいもあり
その後も ノリカ姉さんは 泣きっぱなしだった。
女同士の夜蝶だけども
仲間になれる夜蝶との始まりは
殴り合いの喧嘩をして その後 親友になるなんてゆう
男同士の友情に 何処か 似ているところがある。
表面上は 誰でも 仲良さそうには出来ても
仕事をして行く上で
言いたくないことを
言わなければ ならなかったり
厳しいと思われても その姿勢を崩せない
そんな 場面もある・・
私の目も じんわり来たけれど
昔から 後輩達のいる前では 絶対に
泣かないと決めていた。
だから 涙がにじむと こぼれる前に
いちいち 横を向いたり 上を見上げたり
意地でも 涙をこぼさないように必死だった。
そんな 私らの様子を
ママは どこか 冷めたような 目で見ていた。
酔い潰れた ノリカ姉さんを
タクシーで 最初に降ろし
次に タク兄を 会社が借り上げている
マンションまで送った。
タクシー代を 受け取らない私に
しつこいほど 深々とお辞儀を繰り返す タク兄・・
私は 窓をあけ 手を振った。
もう 店を辞めた この時から
夜蝶でも お客様でもない
そう言う 別れのが 寂しくないと
何故だか 思った。
また続きでも・・
今日も ここまで お読み頂きまして ありがとうございました。。
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