CLUBゆり太へ ようこそ・・
必死で 追い続けていた
ママの 背中
いつか
ママから 離れる・・
その日が
来るのを
自分も 待っていた??
いつの頃 からか
無意識に それを
望んでいた事に
気付いた ゆり太でしたが・・
今日はそんなこと書いていきますので
どうか最後まで お付き合い下さいな。。
ゴールデンウィーク前
店を辞めると ママに伝えてから
もう 6月に入っていた。
梅雨の ジメジメした雨が
深夜の街にも 例外なく
降り注ぎ 車のライトと
無数にあふれる 傘の影が
通りを 窮屈に
埋め尽くしていた。
そんな ある日の 閉店後
私は ゴミ松の店にいた。
店には まだ 客が残っており
ガヤガヤ している。
私は カウンターで
分厚い カタログを広げ
ひたすら ページをめくり続ける・・
カタログには
様々な デザインの
名刺の見本が 並ぶ・・
ゴミ松の店に 行く事にしたのは
単純に 『ママ』と 言う
女がオーナーを 務める店が
面倒だったのと
ここは
元々 ママが
自分の店を
オープンするまでの間
私を 預けた店。
普通に 考えて
信用ならぬ 相手に
私を 預けるなんて するハズが無い。
少なからず
ママは ゴミ松を 信用していた。
だから
私を この店に 預けた。
それに 正直
次の店について 色々考えるのも
面倒だったのだ。
ゴミ松の 誘いが
渡りに船とか 思いたくなかったが
結果的に それが 自分にとって
1番 シンプルな 選択だった。
ただ
ここには 大人の事情があるらしく
ゴミ松の店に 移籍する事は
まだ 誰にも 言うなと
口止めされている。
タイミングをみて
ゴミ松
自ら ママに伝えるとの事だった。
ママは 気が強く
キレたら かなり厄介だ。
その為
周囲に 敬遠する人間は 多く
実際 ママと
腹を割って話せる 女の子も
それ程 多くはなかった。
だけども
私は ある時から
ママに 何でも話せた。
昔 ママが 店を出す前
2人で 一緒に
仕事をしていた 店で
まだ 夜の世界に入りたて
若い ボーイが
来店前 客から 電話で
指名の子の 出勤の確認が
あったにもかかわらず
当日 シフトにすら 入っておらず
やらかし 客を激怒させたことがあった。
その日の 閉店後
ママと その やらかしたボーイ
私とで
ご飯を 食べに行った時のこと
「ゆり太は 言い訳をしない。ウソを言わない。」
「自分が やったこと 言った事
それが どんなに 最悪な結果であっても
事実を そのまま話す。」
「だから 私は 店の子の中で
ゆり太を 1番 信用出来る子だと 思ってる。」
やらかしたボーイに
ママは 静かに 言った。
客を 怒らせたのは
最悪以外の 何モノでも無いが
この やらかしたボーイは
言い訳をした。
失敗よりも
その 見苦しい言い訳が
何よりも 良くないと
ママは 決して 怒るでもなく
静かに 諭すように 話した。
同時に
いつも 怒鳴り散らしているママが
自分の事を
そんなふうに
思っていたのだと 知り
それは 素直に 嬉しかった。
だから ママの期待に応えようと
必死で ついてきた。
そして 何より
誰かを信じれば
いつも 傷つき
人を 信じる事から
逃れていた 私は
その時から
ママだけは
誰よりも 心から
信頼出来る
存在だと 思えるように
なれたのだ。
そして
それは 例え
このような形で 店を去る事に
なっても
そのママを 信頼する気持ちに
変わりは無い。
だから ゴミ松の店に 行くことを
言わないで いることが
どこか 感じたくない
罪悪感のように
私の気持ちを
常に 揺らしていた。
「言い訳をしない。ウソを言わない。」
ママが 私を 買っている 部分では あったが
そもそも 私は
単純に 面倒くさがりなだけだった。
ウソをつけば 必ず
何処かで 辻褄合わせが
必要になってくる・・
はじめに ウソをつくと
次のウソが 更に厄介だ
で、あるなら
1度 腹をくくり
例え 1発 殴られようが
本当のことを 全て言えば
話は そこで終わる・・
トラブルが 小さいうちに
失敗を 認め
謝罪をする方が
自分にとっては よほど
気楽だと 考えていた。
夜の世界は
客を 騙して
金を 吸い上げているような
イメージを 持たれている所が
あるかも知れないが
実の所 全くの逆である。
例えば
客を 色恋で 引っ張っていたとして
『今月 ナンバーワンにしてくれたら 付き合う』
なんて 話をしたとする。
その客のことが 好きで
ナンバーワンになったら
本当に 付き合う気持ちがあるなら
別に良いのだが
そうではない(絶対に有り得ない)のに
そんな 果たすつもりすらない
約束を 口にするのは
客にとって
単なる ウソで
だまし討ちでしか無い。
結果 信用を失うだけなのだ。
目先の売り上げに 囚われて
その場しのぎの 約束をするのは
かえって 命取り。
この場合は
信用を 失うだけの
約束をするよりも
純粋に
自分を応援してくれる 客を
コツコツ増やす 努力をする方が
ずっと 現実的なのだ。
ママにも 昔
「出来ない約束は するな」と
よく 言われていた。
「断って来なくなるなら
もう その客とは それまでだと思え」と・・
しかしながら
夢を売る仕事・・
客が喜んでくれて
今日が 幸せな時間だったと
思って貰える ウソであれば
そこは 最後まで
私も本気で つき通す
それで その客の
心が 救われるのであれば・・
名刺は 白くて
シンプルな
ゴミ松ら 男スタッフ達と
同じ デザインのモノにした
そして 私は
これまで ずっと
本名で 名字も入れている。
夜蝶バリバリ
ピンク 紫 カタカナ読みの 源氏名の
キラキラ 眩しすぎる ラブリーな
名刺は まず客が
家に 持ち帰れないし
帰り道 ほぼ 確実に
何処かに 捨てられる。
例え
偽名でも
何でもイイから 名字を入れると
信頼度が増すし
シンプルなもので 有る方が
客にも
あまり 神経を使わせずにすむ。
これも
ママから教わった事だった。
名刺の 発注を ゴミ松に頼み
店を出て 通りに下りると
さっきまで
乱暴に降っていた 雨が
霧のように白く やわらかな
優しい 景色に
変わっていた。
もう 止んでいるように
見えるが
瞼や 髪が
その存在を
感じる・・
しっとり 肌にまとわりつく
その 感覚は
タクシーの 車内を満たす
冷たい空気で
急激に 冷やされ
眠気と 酔いを
一瞬 フリーズさせた。
窓に残る
無数の 雨粒が
繋がり 流れながら
消えていくのを
ぼんやり見つめ
家までの道のり わずかな
時間 浅い眠りに
つくのだった。
また続きでも・・
今日も ここまで お読み頂きまして ありがとうございました。。
お名前.com
コメント