~ふたたび~
子供達は夏休みで何かと忙しく 妊娠前とさほど変わらず動き回っていた。
そんな ある日の午前中 お嫁さんから電話が入った。
一瞬 父の訃報かと思ったけれど そうではなかった、そうではないものの良い知らせでも無かった。病院から連絡があり 父の容態に変化が出始めたとの事だった。
ケアの方針を変えるにあたって 直接話をする必要があるらしく 病院に来るようにとの事だった。
兄もお嫁さんも仕事があるから私が行く事になった。お嫁さんは今にも泣きそうになっていた。
実の娘の私よりも父を心配し大切にしてくれている こんなお嫁さんは 何処を探しても居ないだろう。本当に私たち親子はこのお嫁さんに何度も助けて貰っているのだ。
いくら感謝しても足りないと思う。
病院に着いた。この前来た時と同じく 猛烈な暑さの中 急勾配の坂を上り 病院の玄関に到着した。面会時間外ではあったけど 事情を話すと すぐに通して貰えた。
お嫁さんの電話によると 父の病室は変わり この前と違う階になったとの事だった。エレベーターで父の移動した階で降りた。
この前よりも静かに感じた。面会時間外だったからだろうか?
ナースステーションには看護師さんがひとり パソコンの画面で何かを確認している様子だった。
病室を聞こうとしたけれど 忙しい様子だと思い ほんの数秒 突っ立っていると 画面から顔を上げた看護師さんは少しびっくりした様子で
「あ、どうされましたか~??」と、立ち上がった。
用件を話すと 父の担当の看護師さんは席を外していて 戻るのに少し時間がかかるとの事だった。
「先に病室 案内しますね、面会終わりましたら また こちらに声をかけてもらえますか」と、廊下を歩きながら看護師さんは言った。
この前 パンとかビスケットの事 看護師さんに聞くと言い残し そのまま帰ったから 父は騙されたと怒ってるんじゃないか? また いつだかみたく罵声を浴びせて来られたら どうしよう。
ちょっと 恐かった。
とても忙しそうな この 看護師さんに この前お願いしたように 先に父の様子を伺って貰えないかと頼むのは とても悪くて 言えないまま 病室の前に立っていた。
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